「オナニーの申し子」の異名も持つ、TENGAヘルスケア取締役の佐藤雅信さん。後編は、いよいよTENGAに入社してからの日々と、現在。そしてこれからの展望を語っていただきます。
▼前編はコチラからも読めます!▼
【参考記事】『日本が誇る「オナニーの申し子」にして、TENGAヘルスケア取締役の佐藤さんにオナニーから妊活まで真面目に聞いてきた【前編】』
日本が誇る「オナニーの申し子」にして、TENGAヘルスケア取締役の佐藤さんにオナニーから妊活まで真面目に聞いてきた【後編】
1. 入社当時のTENGAは一軒家。商品生産の手伝いを徹夜で行なったことも

——実際に松本社長と初めて会ったときの印象は。
変わった人、ですかね(笑)。赤いつなぎを着て出てきたんですよ。当時はそれが松本のトレードマークだったので。ただ、その後一緒に働いてみたら、仕事中は穴の空いたスウェット姿だったので、それよりは良かったかもしれませんが。
——面接では何を聞かれましたか?
志望動機など聞かれたような気がしますが、向こうからの話がメインでした。
——聞くタイプの就活。
当時は生産が全然追いついていませんでした。でも、採用も特に行っていなかった。そこに僕がやってきたので「これで世界を変えていくんだ」という、大きな話をしてもらった記憶があります。
——その後、12月からアルバイトとして働き始めたそうですが、具体的には何をしていましたか?
…まずは、掃除です(笑)。勝手に掃除していました。
ちなみに自分のデスクは、最初「出窓」でした。場所がないので。
——わあ便利(笑)。いまのオフィスからは想像がつきませんね。皆さんで、酒を酌み交わし熱く語り合うことなどは?
いえ。みんなで食事というと、社長がよくカレーを作ってくれていました。すごく忙しいはずなのに、チャーシューとかも手作りしてくれて(笑)。
——そこにも、ものづくりへのこだわりが…! 掃除以外にはどんなことを?
とにかく人手が足りないので、工場に行って生産の手伝いもよくしていました。当時はパーツごとに出来上がったものを手作業で組み立て、フィルムを巻いていたので、徹夜で手伝ったりしていましたね。
——「…やっぱり辞めようかな」と思ったことは。
いいえ。楽しすぎて、休学したぐらい。
2. 入社翌年には『TENGA EGG』を開発!「先っちょだけで出来ないかな?」

——正式に入社されたのが2007年。何が変わりましたか?
名刺がもらえたことですかね。
——肩書は?
何もなかったと思います(笑)。
——でも、翌年に発売された『TENGA EGG』は佐藤さんも開発に関わったんですよね。
もともとは2006年、まだアルバイト時代に思いついたものでした。当時は最初のCUPシリーズが5種類あったんですけど、当時の僕としては、もう少し手軽に、価格的にも気軽に使えるものがあったらいいなあという思いがあったんです。
——学生さんはお金もないですしね。
それで、倉庫整理をしていた時に中の部品をいじっていたら、「あれ、これ先っちょだけで出来るんじゃないか?」と思って。先端部分がちょうど亀頭みたいな形をしていたので、そこをちょんぎってみたらすごく良かったんです。
——すごく良かったんですか。
しかも、伸ばして使えるところが新しかったんです。これならサイズを選ばずいろんな人に使ってもらえる。そして、小さければ安い価格で販売できるんじゃないかと。
——社長にプレゼンした時は、いかがでしたか?
「こんな小さいもので、できるわけないよ」みたいな感じだったんですけれども、伸ばして使えることも説明したら、「これは新しい」という感じになりました。
——とはいえ、発売は2008年の11月。少し時間が空いています。
そのときちょうど取り組んでいたのが、『FLIP HOLE』という繰り返し使えるタイプだったので、そっちをまず出そう、という感じでした。
3. 包茎手術→腟内射精障害→TENGAヘルスケア設立へ

——現在はTENGAヘルスケアの取締役。改めてTENGAヘルスケアについてご紹介ください。
株式会社TENGAヘルスケアは、TENGAでこれまで培ってきたノウハウを基に、各種学会や医療・福祉・教育の専門家・機関と連携し、それぞれ単独では解決できなかった性にまつわる悩みや問題を解決。全ての人のセクシャルウェルネス向上に貢献していくことをコンセプトとしています。
——自分のスマホで精子が見られる『メンズルーペ』を開発されるなど妊活事業にも力を入れていますが、佐藤さんが手を挙げたことが設立のきっかけだとか。マスターベータソン世界記録保持者が、なぜまた。
実は、優勝してから1〜2年後くらいまでは元気だったんですけれど、そこから急激に性欲が落ちてしまったんですよ。まだ30才ぐらいだったのに。
——ずいぶん早いですね!
やりきっちゃった感じかもしれません。でも、じゃあこの状態でこの会社で何をしたらいいんだろう? と。
——確かに。
「興味ないし…」みたいな。おまけに腟内射精障害にも悩んでいまして、こういう風に「性を楽しみたいけど、何かしらの事情で楽しめない」状態の人っていっぱいいるんだろうな、と。そこで、自分と同じような人の力になりたいと思ったのが始まりです。
——腟内射精障害に悩んでいたんですか。
はい。いまでも多少悩んでいますが、17才ぐらいからでしょうか。
——はやっ!
刺激に対する耐性がついてしまったのでしょう。それに追い打ちをかけたのが、20才のときに受けた包茎手術です。
——真性包茎なんですか?
いえ、仮性包茎ですが、不適切なオナニーによって皮が伸びきってしまったものだから。
——切らなければいけないレベルに到達した…。
皮が伸びていても、身体の機能的には何の問題もないのですが、当時は性に関する適切な知識にも乏しく、包茎手術専門クリニックの広告にまんまとハメられてしまいました。
包茎手術って、裏筋の皮を切るんです。そこは大事な性感帯なので、手術してしまうと感度がすごく鈍ってしまうことがあるんです。
——(皮を切る代わりに感度が鈍る…。悪魔との契約みたいだ)
その経験から、「皮は剥いても切られるな」ということを若い読者の皆さんには強く伝えたいです。
本当に手術が必要な包茎は亀頭を露出することができないもののみ。しかも何十万円もかけずとも保険も適用されます。悩んでいる方、困っている方は包茎クリニックではなく、まず泌尿器科に相談していただきたいです。
——日本は海外に比べ、包茎に対するコンプレックスが根強いそうですが。
日本では非勃起時に亀頭が露出していない状態を「仮性包茎」と呼んでいますが、これは世界標準ではありません。海外では、日本で言う仮性包茎こそがスタンダードなのです。
——仮性包茎こそがスタンダード…! 勇気が湧いてきます。
この仮性包茎という呼称が日本人男性にコンプレックスを抱かせ、性の健康を損なわせているのではないかという議論もあり、私も日本から仮性包茎という言葉を追放したいと考えています。
——経験者の言葉には重みがありますね。
でも、当時は大会で優勝はしたものの、そんな悩みを抱えてもいたわけです。そのときの僕は海外事業をメインに担当していたのですが、合間に医療系の学会や勉強会にも参加していました。その中の日本性機能学会というところで、2009年に泌尿器科医の小堀善友先生が弊社のCUPを使った腟内射精障害のリハビリテーションについて論文を発表してくださって。これは大きなきっかけでしたね。
——TENGAを使って腟内射精障害のリハビリができる、と。
そうです。原因の多くは刺激が強すぎるなど不適切なマスターベーション方法にあるため、先生は弊社のCUPシリーズのなかの、黒いハードタイプ、赤のスタンダードタイプ、白のソフトタイプを順番に使っていくことで、オナニーの刺激を弱くし、射精に必要な刺激の強さを下げていく方法を提唱してくださいました。
——こうした出会いが、TENGAヘルスケア設立を後押しした。
2015年の春に事業部として立ち上げて、2016年の11月に会社として設立しました。
4. 日本が誇る「オナニーの申し子」!マスターベータソン世界記録保持者
左から、『MEN’S TRAINING CUP FINISH TRAINING』『メンズルーペ』『精育支援サプリメント』『SEED POD』
——最初の製品が『メンズルーペ』ですね。
はい。2016年5月発売です。
——この開発も、佐藤さんご自身が発案されたんですか?
小堀先生との会話の中から生まれました。ちょうど男性不妊がクローズアップされてきていて、「スマホを使って自分の精子が観察できたらいいよね」と。
——実際にこのルーペでチェックされましたか?
もちろん。ちょうど第一子が生まれた頃だったので、自分の精子が泳いでいるのを見たときには感動しましたね。「このオタマジャクシのひとつが、我が子に…!」という実感が非常に強かったです。病院の精液検査を受けたこともありますが、それだと結果は数値でしか出てこないので。実際使っていただいた方からも感動したと言う声をいただきました。
——その後も、『MEN’S TRAINING CUP』や、精子の育成をサポートする栄養機能食品『精育支援サプリメント』など、続々と商品を発売されています。
はい。『MEN’S TRAINING CUP FINISH TRAINING』はまさに腟内射精障害や遅漏のリハビリをサポートするためのグッズです。『精育支援サプリメント』にはプリマビエという抗酸化力が非常に高い成分が入っていて、その成分は精子の数、精液の量、運動率すべてが増加させたという実証結果がでています。プリマビエを配合しているサプリは、いまのところ弊社のものだけじゃないでしょうか。
——この、横にある筒は…?
これも妊活サポートシリーズの一つで、『SEED POD』。精液検査や不妊治療時に自宅で採取した精液を病院に運ぶ際に保温し、精子の劣化を防ぎます。
——不妊治療中の女性から、「パートナーの精子を冷やさないよう、病院まで持っていくのが大変」という悩みを聞きます。コートの中に忍ばせたり…。でもこれなら、普通にかばんに入れて持っていけます。
はい。男性が自分で持っていく際も、わりとむき出しで受付に出すことがあって。どんな羞恥プレイだと(苦笑)。検便だって、むき出しじゃ嫌でしょう。
——嫌すぎますね。本来なら医療機関が開発するような製品を続々と開発されていますが、佐藤さんの社内での具体的な役割はなんでしょうか。
…基本的には雑務というか。
——雑務!
名刺を発注したりとか、チラシを発注したりとか(笑)。
(TENGA広報さんフォロー)代表取締役の鈴木は営業的な業務が多いんですけれども、佐藤は医療関係者との専門的な連携とか、英語力の点でカバーをしています。
いやいや本当に雑務ばっかりです(笑)。
あとは商品の企画などマーケティング業務ですね。
——(謙虚すぎる…!)
5. 日本が誇る「オナニーの申し子」!今後は「オナニーと性の語り部」に

——では、改めて今後の展望をお聞かせください。
TENGAヘルスケアは「性機能サポートシリーズ」と「妊活サポートシリーズ」の2本柱で製品を開発していますが、まずはこれを拡充していきたいですね。
——具体的には。
現在発売している商品は、先程ご紹介したものの他に、女性用のダイレーター(※婦人科系のがんや放射線治療の影響で萎縮してしまった腟を拡張するトレーニンググッズ)があります。既存のものはプラスチック製の硬い棒で、そっけない上に痛かったりもするんです。
——聞くだけで痛そうです。
恐怖感を覚える方もいるそうです。いっぽう、TENGAの女性向けブランド「iroha」のバイブレーター「iroha FIT」は、ふんわりしていて肌なじみもいいので、イギリスではこれをダイレーターとして販売しています。保険適用もされているんです。今後は国内での女性用製品も拡充していきたいですね。
——他にも何か製品化の予定はありますか。
男性の悩みも、いろいろサポートしていけたらと思います。たとえば、勃起に関する悩みですとか。その他広くセクシュアルヘルスをサポートしていきたいと考えています。
——今後のビジョンについてはいかがでしょう?
もっと性に対する悩みや問題を話しやすい環境や、相談できる受け皿を作っていきたいですね。
——病院だと敷居が高いですが、そのあたりはやっぱりTENGAのブランド力ですね。
そう思いたいです。あとは、性科学に対する研究。その研究によって皆さんのセクシュアルウェルネスの向上につながればとてもいいな、と。また、教育の部分も課題です。性に関して適切な教育がなされていないことによる問題がたくさんあるので、その解決に役立つツールや、頼りになるサイトを提供していきたいと思っています。
——やることが盛りだくさんですね。では、「オナニーの申し子」と呼ばれた佐藤さんは、最終的に何になりますか?
えー…。雑用係(笑)?
——どこまでも(笑)!
(TENGA広報さん)オナニーについて真面目なところからカジュアルなところまで話せる人っていうのはあまりないので、今後も、アイコンというか、語り部として活動したらいいんじゃないでしょうか。
語り部。じゃあそれでいきます。
——ありがとうございました!
TENGA創業当初から在籍する佐藤さんは、数少ないTENGAの歴史の生き証人。さらに、自身のオナニー経験や栄光、挫折も語れるまさに「語り部」でした。美容男子でTENGAさんを取材させていただくのはこれで3度目ですが、松本社長を始め、誰もが時間いっぱい、誠実に、率直に話してくれるのが印象的です。椅子オナの話も伸びきった皮の話も飛び出しつつ、同席する女性も全員笑顔なのは、性に真面目に向き合っているから。女性をバカにしてウケを狙う「男子校ノリな下ネタ」とは明らかに違う、明るく真面目な性の時間がそこにはありました。僕らの様々な悩みにもきっと寄り添ってくれるTENGAヘルスケアさんの今後にも期待しつつ、いずれ4度目の取材もよろしくお願いします!
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