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【ニュー男子】センチメンタルな秋のハグ



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先日、岐阜県から彼の両親が2泊でわが家にやってきた。 ご両親とは9年前の夏の日に、岐阜の屋形船で鵜飼を見つつ花火を見るみたいな盛りだくさんナイトの前にお家にお邪魔し、 息子さんの親しい友達みたいな恋人みたいな曖昧な顔をして、 いつもお世話になっております、と挨拶をして以来の再会だった。

お会いすることのない間に、 彼のお母さんとはフェイスブックでつながり、 お互いの投稿に「いいね」をしあったりして、 それはウェブ上のお付き合いに過ぎないのだけど、 ウェブ上のお付き合いというのは、ちゃんとお付き合いなんだ、と思うような再会となった。

さらにこのニュー男子も読んでくれていて、 ぼくがどのような人間なのかの輪郭はおそらく伝わっていたのだろう、 会ってほどなくして二人きりになったとき、 「私、今日は決めてきたことがあったの。ハグをしてもいい?」と言われ、 ちいさなわが家のキッチンで、お母さんとハグをした。

なんだか、本当にふしぎな気持ちになった。 自分の人生にこんなことが起こるなんて想像すらしたことがなかった。

ゲイですが何か? という気持ちが年々大きくなり、 あまりゲイであることにこだわっていない自分のような気がしていたけれど、 彼の両親と会う前に、いや、会ってからも、 どこかにほんの少し、後ろめたさなのか申し訳なさなのか、そういうビターな何かを感じていた。 そのモヤっとしたものが、お母さんのハグによって風船が割れるみたいに弾けた気がした。

翌日、彼とお父さんがエアコンを取り付けて作業をしている間に(ご両親はわが家に新しいエアコンを届けてくれた)、 お母さんをアトリエにご案内。

ぼくの絵を見てもらいながらカレの話をした。 3歳のカレとか高校生時代とか留学先から帰ってきた頃とかのカレを聞いた。 そのどれもが、12年も一緒にいるけれど、彼の口から聞いたことのないものだった。 きっと、彼自身も覚えていないような話なのだろう。

ああ、そういう子供だったのか。 へー、そういうことを言ったのね。 なるほど、そこは今と変わっていないな。

なんだかとても幸せな気持ちでその話を聞いた。

矢野顕子の「ひとつだけ」という歌の「いちばん楽しいことは あなたの口から あなたの夢 きくこと」という一節に、 自分の感性にはないロマンティックさを感じて長らく好きなのだけど、 ああ、もっと素敵なことを知ったかも、と思った。

「ぼくのしらない彼の ぼくのしらない話を 彼の母から きくこと」

その時間が個人的には2泊3日のハイライトだった。 濃密な時間の中の、もっとも濃密な1時間。

そんなことを既婚者の友人にさらっとメールしていて、おや?っと思った。 結婚している男女たちって、ふつうに、ふつうのこととして、互いの両親と会ったりするんだよなあ、と。

こんな風に相手の子供時代のことを、母だけでなく父や兄弟などからも聞く機会が、 お正月やお盆だったりに毎年のようにある人たちが、世の中にはたくさんいるんだな、と思ったら、 とても不思議な気持ちになった。

知っているようで知らないことって実はいっぱいある。 恋人の両親と食卓を囲んだりいっしょにテレビを見たりするこの感じは、 ドラマや映画なんかで何百回と見てきたけれど、ぼくは知らなかった。 それがどういうものかを想像したこともなかった。

このカルチャーショックは、トム・フォードの「シングルマン」を見たときに感じたことと似ている。 「シングルマン」は、ゲイカップルの話なのだけど、 お金持ちでステータスのあるイギリス男性が主人公で、 暮らしぶりなどは自分とはかけ離れているものの、その世界観というか空気感を「わかる!」と思った。 そして、これまで男女の恋愛ドラマや映画をみて感じてきた「わかる」は嘘だった、と知った。 そう気がついた瞬間、一瞬自分がとても不憫に思え、泣きたい気持ちになったのだった。

人生って、すごく不思議なことが起こる。 ぼくだけが知っている不思議なことが、たくさんたくさんこの人生にはあった。

ぼくは死ぬ時、たぶんあのハグを思い出すんだろうなって思う。 あまりにも唐突かつ斬新な申し出で、ギュっと強く、パっと離れた1秒未満のことを。

彼のことをとても大切にしている人たちに会い、 ぼくの人生に新しい色が加わった気がした。

この秋は、本当にいろいろありまくりで、今夜はとてもセンチメンタルな私のようです。 そんなおセンチポエム雑記に最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました!
ニュー男子 拝





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