プライベートアクトレス。略してPA。そんな言葉はご存知ありませんか?
一体いつの頃かはわからない土曜21時は榎本加奈子主演で、たしかにそのようなドラマがあった。
PAという言葉をときどき音楽周りの人の口から聞くと、
ぼくの記憶倉庫からは、ものすごく痩せた榎本加奈子の姿と特徴的なあの鼻声がうっすらと思い出される。
さて、どうしてそんな地味な回想を綴っているかというと、
最近、人に伝えるたとえ話として「プライベートアクトレス」を使ったからであります。
まずこのドラマの内容を特に調べずうる覚えで書きますと、
読んで字のごとく、私生活で女優する人が主人公で、
今でいう”結婚式に親族のふりをして列席する”とかそういう職業の話。
もしかすると当時もそうした仕事は実際に存在していたのかもだけど、
体感としては時代がPAに追いついたなあ、などと思う。
たとえ話におけるPAは、ある女性の家庭での居心地の悪さを回避する方法として、
自分なりの設定をつくり、アクトレス化して立ち振る舞ってみるのはどうか。
という提案をしてみた際に使いました。
これも記憶だけを頼りに書きますが、
女優の高橋恵子さんは現役子育て時代に、家事をやるモチベーションとして、
一度玄関から外へ出て「家政婦の高橋です」という風に役になりきり家事をこなしたのだそうです。
この話が本当に大好きなのですが、みなさんどうですか。すてきじゃないですか?
そうして日常を演じることで、自分の感情から切り離される可能性があるのだとしたら、
それは良いのか悪いのかなんともわかりませんが、
やらねばなことへのスイッチとして役を構築することは、手軽にして効果がありそうだなあ、と思う。
たとえば「面倒な掃除をやらなくてはならない」は
「掃除を手際よくこなす家政婦をやる」と変換することができるわけですが、
実際に行われたことは「掃除」だとしても、PA化した私がしたことの軸は「掃除」ではなく「演技」。
そこにカチンコなんかも用意してみたらば、
カットがかかれば即座に素の私に戻り「あら、家が掃除されているわ」ってなことにもなるやもしれません。
実にくだらないことを書いている気もしていますが、でも原理としては病は気からとか、
プラシーボ効果(薬じゃないものを薬と処方され飲むと病気が治ったりする)などにも通じる、
人間のしくみとも言える”意識の使い方”として、なかなか良いのではないかな、と思うのであります。
そういえば昔、関根勤さんがインタビューで、
「青木功のモノマネをしながらゴルフをするとスコアがいい」
というようなモノマネの効能のお話くださって、とても印象に残っている。
また某女優さんは本名と芸名がかけ離れていて、それについて話を聞いたら、
自分にはできないことも芸名の私だったらできる。
芸名の私には芸名の私の人格があって、彼女になればなんでもできる。
そのようなことを仰った。
と、その効能を熱弁している私はPA未経験者というがっかりなオチなわけですが、
今日書きながら「なんかいいことを知った!」という気分になっているので、
明日はライター界の林真理子になって(それはもう林真理子じゃないけど)、
涼しい顔で猛スピードですばらしい原稿を書くことにします!
以上、涼しすぎる9月の終わりからいつかのあなたに向けてごにょごにょ言わせていただきました。
最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました!
ニュー男子 拝