その昔、ぼくも人並みに出会い系にハマっていた時代がありまして。
といっても当時はまだガラケーなどという言葉はなく携帯といえば携帯電話のこと、という頃。
カメラさえ付いていないauがIDOだった90年代の終わりだかミレニアムだかが、わが出会い系デビューだった。
その人とのことをとてもよく覚えている。
その人とは、ゲイの巨大サイトの出会い掲示板みたいなところかなにかで知り合い、
何が好きですか? どういう音楽聴きますか? 好きな映画って? どんな雑誌を買ってる?
などなど、The UBUな私は、当時なりのデリカシーの範疇で、自分がその人と会いたいか否かを見定めるべく質問を重ねた。
どれだけ慎重なふたりだったのだろう、何度かのそんな当たり障りのない往復をつづけ、ようやく写真を交換しようとなった。
同じような意識レベルの人同士が出会うのが宇宙の真理だとしたら、
当時のぼくは「ゲイを誰にもバレたくない。なんならゲイという言葉を使わずにこの人とも会いたい」と思うほど、
それを秘密としていたため、顔写真を送ることを相当にリスキーと捉えていた。
ひょっとするとお相手の男子もまたそのような意識ゆえ、そうしたスローリーペースで事が運んだのかもしれぬ。
ちなみに写真はというと、デジカメをパソコンにつなげ取り込み、サイズ調整の仕方もわからなかったため、
今思えばとんでもなくデカいバストアップを1枚送った。
ふしぎなくらいその写真を覚えている。
無印のグレーのVネックにV部分から白のTシャツ(アニエスベーだったかも)だかをのぞかせて、
絶妙に顔の全貌がわからぬ、けれどもそのポーズは自然なのです、と言いたいうつむき具合の私は口元にちいさく笑みをたたえていた。
どこまで計算して撮ったのだろう。いや、たまたま誰かが撮ってくれた写真だったかもしれない。
とにかく、その「うーん、わかりそうでわからない」宣材写真で、ぼくはまだ見ぬ恋人候補と出会おうと努めた。
そうしてある日、ふるえながら町田にあるたしかプリンスという甲冑とか造花とかでごった返す、
ものすごく強めの喫茶店で「はじめまして」したのであった。
が、そのプロセスは鮮明ながら、相手の顔は記憶にない。名前はケンジ君だったっけ?
さんざんメールを送りあい人柄やら知りたい情報を自分なりに得て、
うっすら恋心を抱くまでになったその人であったけれど、恋もどきは一瞬で終わった。
何かが想像と圧倒的に違ったのであった。
二次元の相手というのは罪作りだとぼくはその時に深く知った。
もしかしたらあちらも似たようなことを感じたのかもしれない。
失礼のないように「今日はありがとうございました」的メールを交わした後、ぼくたちは元の他人に戻った。
百聞は一見に如かず。以来、ぼくはとにかく会ってみよう! と出会い系へのスタンスを変えた。
都合よく働かた妄想で膨れ上がった期待値を超えるカレなど実在しないのだと考える人となった。
さて、そんな超個人的な甘苦メモリー吐露をなぜしているのかというと、
出会い系サイトを通じて知った誰かと「はじめまして」する経験から、
お遊び的に友だちとの待ち合わせに「あ、どうも」と初対面ごっこをしてすごく面白かったことを昨夜思い出したため。
実はその先に書きたい”本題”があったのですが、
ご覧のようにだいぶ寄り道が過ぎたためそれについてはまたの機会にするとして、この「はじめまして」ごっこ、なかなかに楽しいですよ。
よく知ったつもりになっている相手のことを、新鮮な感覚で”もう一度知る”ことができたりします。
もちろんその鮮度は、ほどなくして自分たちの滑稽さで爆笑してしまい消え去るのが常なのですが、
瞬間的にでも出会い直すことで、今日のその人に自分がどれほど心を開いているかを思い、
「これまでいろいろありがとうね!」 と、ともに過ごした時間とこの関係に感謝の念がわいてくるのであります。
なかなかクレージーなこのPLAYですが、「ごっこ」「演技」の力、つまりは意識のパワーを体感できる良い方法かもとも思う。
ご興味わいた方ありましたら、ぜひトライしてみてくださいね!(報告も聞いてみたい)
以上、本日も中年の戯れ言にお付き合いいただき誠にありがとうございました!