辛酸なめ子氏、吉本興業の懐の深さを覗く
お笑いだけでなく映画や文芸など全ての文化を制覇しそうな勢いの吉本興業。ついにダンスのスクールも開校しました。ダンスの分野でのスターを輩出するべく、多額の資金をかけて始まったプロジェクト。ヒントン・バトルダンスアカデミー、略してHBDAは、なんとオーディションに受かった生徒は奨学金で無料で通えるという、すごい大盤振る舞いです。その1期生が成果を発表する「HBDAショーケース2018」が竹芝のニューピアホールで開催されました。まだ始まったばかりのプロジェクトなのにほぼ満席で注目度の高さを感じます。
こちらのスクールは、名称通りヒントン・バトル氏という有名なダンサーで振り付け師の黒人男性が指導にあたっています。1975年、10歳頃に「The Wiz」の案山子役でブロードウェイ・デビューしたという、早熟な才能の持ち主。ダンスの演目の合間に、ピエロ的にヒントン・バトル氏が登場し、本場感を醸し出していました。
ダンス鑑賞だけではなく、英会話のミニレッスンを受けられるお得感も
ACT1では、世界の様々なダンスが披露されました。まずは、クラシカルな演舞。このスクールでは、バレエとタップとヒップホップ、モダンダンスの全種類を習得できるそうです。それが世界で通用するスキルです。続いての演目では和太鼓が盛り上げ、左右で太鼓を叩きながら「そいや~!」「とりゃ~!!」と叫ぶ奏者。その間を軽々と踊るのが、スクールでも将来を期待されている男子生徒です。合間に、ヒントンさんが出てきてお菓子を配りはじめました。ほぼ毎回出てこられて、お客さんをステージにあげてウサギの耳のカチューシャを付けさせていじってみたり、客席の何人かに花を配ったりしていました。ダンスのショーを観にきたら、英会話のミニレッスンを受けられたみたいで得した気分に。お客さんにフレンドリーなヒントン氏は、最初と最後に吉本興業へのお礼を丁寧に述べていて、日本人以上に義理や人情がある方のようです。
男子の腹筋の割れ具合に釘付け
ACT1後半のヒップホップナンバーではマイケル・ジャクソンの曲に合わせてキレが良くてセクシーなダンスを披露。客席から歓声も上がっていて、生徒さんのお友達でしょうか。ダンスがうまい子は、現代ではクラスの人気者でリア充なのだと実感します。それにしても衣装がわりと露出度が高めですが、男子の腹筋の細かい割れ具合に目が釘付けでした。女子も筋肉がほどよくついていて美しいシルエットです。あとで聞いたら、このスクールでは生徒さんはボディラインを隠さないことが推奨されているとか。その風習によって意識も高まって磨かれていくのでしょう。
ずっと続く放課後、青春のエネルギーのおすそわけ
続いてACT2は、高校を舞台にしたダンスドリームという趣向です。高校の風景から時空が歪み、ダンスの世界にワープ、という演出が楽しいです。しかも先生役としてなだぎ武氏が登場! ハイウェストのシャツインのジャージ姿で、頻繁にズボンを持ち上げてどんどんハイウェストになっていく動きが、ダンスに負けないインパクトでした。机に乗ったりして踊っている男女を見て、このスクールはずっと続く放課後のように充実して楽しい空気なのだと感じられます。男子が比率的に少なめですが、カップルとかも自然にできそうです。青春のエネルギーをおすそわけしていただきありがとうございました。
辛酸なめ子氏、ダークサイドと真逆の若者にモテたいか聞く
最後、生徒さんお二人に話を伺いました。和太鼓とのコラボなどソロパートも多かった松平さんと、最後もディーバ役で目立っていた斎藤さんです。比率的に男子が少なくてモテるのでは? と聞いたら「そんなことないです。モテたいです」と松平さんは軽く否定。「でも、皆家族とよりも長い時間を過ごしていて、仲が良いですよ。ライバル心もあるけど、それ以上に仲間意識が強いです」「仲が良すぎてヒントン先生が怒ることもあります」というお二人の発言を聞くと、アットホームな空間みたいですが、やはり厳しいショービスの世界では馴れ合いになってはいけないのでしょう。4種類のダンスを全て練習することについては「海外では全種類踊れるのが当たり前だそうです」と、松平さん。「何にでも通用できるエンターテイナーを作りたいというのがこの学校の理念です」と、斎藤さん。お二人とも、舞台の上ではセクシーだったりかっこよかったりしましたが、こうやって話すとピュアな20歳前後の男女で、全くスレていないところに感動しました。有名になって成功してもダークサイドに堕ちたりしなそうです。今後も見守らせていただきます。
辛酸さんの内面美容女子 ”知らないお仕事”レぽはコチラ
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辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト・イラストレーター。「週刊文春」にて13年間連載コラムを執筆するなどWEB、雑誌を中心に活躍中。「魂活道場」「あの世の歩き方」「女子校育ち」「大人のコミュニケーション術」など、著書は40冊を超える。