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ブラック企業まとめを厚労省が公表。果たしてこれでブラックは減るのか?

厚生労働省が、各都道府県の労働局から「書類送検」された企業をまとめ、オンライン上で公開することになった。果たしてこの「公表」という手段・方法は、黒(ブラック)の企業を白(ホワイト)に変える力があるのだろうか?

厚労省が書類送検された企業を公表。果たしてこれでブラック企業は減るのだろうか?

1.「労働関係法令」に違反した疑いで送検されたブラック企業とは?

電通や日本郵政などももちろん掲載されています

 

2017年5月10日、厚生労働省は長時間労働や賃金不払いなど「労働関係法令」に違反した疑いで送検された国内企業一覧をリスト化し、公式サイト上で発表するようにした。

この内容は2016年10月〜2017年3月の間に各都道府県の労働局が公表した内容を集約したものである。
現時点で334件あり、企業名(株式・有限限らず)、事業所名及び所在地、並びに違反内容などが都道府県別に記載されている。
馴染みのある言葉で言うのなら「ブラック企業」、その一覧である。

従来は47都道府県労働局のホームページ上に載せてはいたが、報道発表で社名を明らかになっているにも関わらず、ネット上では伏せた事例(ちなみに昨年度はわずか1社)、また掲載期間に統一性がなく、その緩んだ部分の改善をはかったかたちが、今回の厚生労働省の公表であり、集約リストである。
公表される期間は1年間、そして今後は月次で更新されていくそうだ。

 

 

2.ブラック企業たちの違反内容は?

長時間労働に賃金未払いなど搾取が横行している

 

「労働基準法違反」の内訳は、安全対策を怠った労働安全衛生法違反、賃金未払いなどの最低賃金法違反、過大な長時間労働をさせた、などである。
記憶に新しいと思うが、2016年度末に女性社員に違法な時間外労働を課していた「電通」や、富山県内工場の従業員が過労死した「パナソニック」、荷積み作業での負傷事故を労働局に報告しなかった「日本郵便」など、大手企業も載っている。

監督課担当者は、「昨年末に発表した『過労死等ゼロ』を目指す取り組みの一環。長時間労働を削減する機運を高めたい」と説明し、「一覧表にすることで社会に警鐘を鳴らす狙いがある」と続け、今回のこの『書類送検された企業のまとめ公表』という手段の目的を述べている。

確かに就職活動をしている学生においては選択の際、非常に役立つリストと考えられるが、しかし冷静になって考えれば、誰もが「氷山の一角」という感は否めないのではないだろうか?
果たしてこれで『過労死等ゼロ』、警鐘は鳴らすことができるのであろうか?

 

 

3.書類送検されたブラック企業のその後

仕事量は変わらないのに時間は短縮…では家に持ち帰るしかない!?

 

株式会社電通(本社:東京都港区・社長:石井 直氏)は、「2017年新年仕事始式」において次のようなコメントをホームページ上に寄せている。

 

“昨年は厳しい年になったが、一連の問題が生じた原因は、われわれに内在する課題から生じたものであることを真摯に反省し、改めるべきところは抜本的に改めなければならない。
現在、さまざまなステークホルダーが当社の変革に注目している。
未だ道半ばだが、すべての改革を不退転の決意をもって進めていく。
成否に最も重い責任を負うのは経営だが、同時に、一連の改革は、経営だけの力で成し遂げられるものではなく、社員の努力と行動が最も大切な力になる。
私は、社員一人ひとりが有している『仕事に対する志と責任感の強さ』が、当社の誇るべき最も大切な資産であり、成長を支えている原動力であると確信している”

出典:電通

ブラック企業の改善や撲滅には何が正しいのか?

 

石井氏のこの話に対し、蚊帳の外から何か言うのはおこがましいだろう。
ただ、「少し違うのではないのだろうか」という不信を伴った疑問を抱いたのが正直なところだ。
揚げ足を取るようなことはしたくはないが、「一連の問題が生じた原因」と簡単な言葉でひとつの命が失われたことをまとめてしまっていいものだろうか?
加えて言うのならば、『仕事に対する志と責任感の強さ』と他社員に対しての奮起をうながすようなことを口にしたが、どうにも昨年の件があった後に発する言葉としては違うのではないかと思わずにはいられない。
少なくともその仕事に対する高い志と責任感の強さがあったがゆえに、女性社員は自死という道を選んだと言えるのに、この発言は軽率ではないかと。
抱えている仕事をいい加減にこなす、お付き合い残業的なものはしない、自分は自分、私がいなくとも何とかなるものだ、とそう切り替えられる人なら、自ら命を落とすことはしないだろう。

「自分が頑張らないと」

という強い志と責任感を持ち、やがてそれが知らない間に大きくなり、それに押し潰されての悲惨な結果ではないのだろうか、と、もやっとした何かが心中に残ってしまう。

同年1月19日の取締役会において石井氏は、社長執行役員を辞任した上で代表権を返上している。
それは己が言った『仕事に対する志と責任感の強さ』か、それとも大手企業に見られる屈強な力が働いてのことなのか、あるいは平俗的処置なのか分からないが、果たして、この決断が正しいのか?そもそもそういう問題なのか?辞職が責任をとる最良の方法なのだろうかと考えてしまう。

 

4.ブラック企業の見えない部分

優秀な人材を採用しても人間力の育成が出来ない企業の弱さ

 

もちろん、亡くなった電通女性社員の直属の上司、あるいはその上にいる人間が、石井氏よりも大きな責任があると考えるのが妥当。
全ての社員を社長が見て管理できるほど、小さな会社ではないのだ。
様々に枝分かれしたものを、全て本体(大木)のせいにするのは厳しい。
そして加えて、その大きな責任がある直属の上司にしろ、雑多で困難な頭を抱える仕事・案件を抱えていることは予想できる。
だが――
忙しいからといって、気付かなかったからと言って済まされる問題じゃないのは言うまでもない。
たくさんの部下を抱える役職の人(上司)にとってはただの「一社員」であるが、部下にとってはその「上司」しかいないのだ。
上司が社員(自分)の未来を握っているのだ。
当然これは電通以外でも言えることで、新入社員、あるいは入社数年目の社員にとって、頼りにし、救ってくれるのは、直属の「上司」であり、先輩なのである。
仕事に対する責任感と同時に、ひとりの人生を背負っているという責任感が必要ということだ。

多忙ゆえ「見えない」「分からない」、そういう部分は確かにあると先に話したが、明らかな社員の憔悴、変化を「見過ごした」にも関わらず、「見えなかった」「分からなかった」と置き換えてしまう上司、先輩は現にいるだろう。
そういう人材が企業を黒く染めていくと言えるのではないだろうか。

 

 

5. ブラック企業の警鐘を鳴らす完全な一覧表とは?

見にくい一覧を載せるにしてもどう改善したのか?は記載するべき!

 

そして話を戻し『書類送検された企業の一覧表公表』の件だが、当然、「社員の命が亡くなった」「賃金未払いにより、家族が路頭に迷った」「安全対策を講じなかったばかりに大怪我を負った」等の記載はなく、

「こういうことがありました」
「こういう違反を犯しました」
「○○円、支払いませんでした」

という、淡々とした説明だけである。
それぞれの社員(被害者)の苦悩、もっと言えば人生に触れる箇所はない。
ただの文字であり、数字だけで済ませている。
これはとても怖いことではないだろうか?
そして肝心の、「書類送検」されたことに対しての代表取締役のコメントもない。
それは1番大切な「それからどうなった?」「書類送検を受けてどう変わった?」の続きがないと同じことである。
補足すれば、企業側にとっては伝えたい数々の言い分もあるだろうし、謝罪、そして今後の方針等もあるだろう。
それらを記載せずにして、黒を白に変えることは果たしてできるのであろうか?


プレミアムフライデーの件もそうだが、どうにも政府の要人は「現状が見えていないとしか思えない」のが本音だ。とりあえずやっています、アピールである。
おそらくこれを読んでいる読者の中に、
「まさにそう」
「何でリストにうちの会社がない?」
と思っている人、また、「会社は潰れては困るけれど、うちも書類送検されてほしい。そして会社を改善してほしい」
と心の奥で叫んでいる人は少なくないと予想する。


繰り返すが、企業名がリストに掲載されるのは、各都道府県の労働局による公表から1年間である。
ただ、厚生労働省が掲載の必要性がなくなったと判断した場合や、労働環境の是正や改善が確認された場合は、1年以内であってもリストから削除するそう。

リストから例え消えても、消してはいけないもの、消えることはない何かは絶対にある、とそう考える。

 

 

厚労省が書類送検された企業を公表。果たしてこれでブラック企業は減るのだろうか?

  • 1.厚労省が「書類送検された企業のまとめ一覧表公表」するようになった
  • 2.それは「社会に警鐘を鳴らす狙いがある」とのこと
  • 3.中小企業と呼ばれる会社はこの中にあるのか?と疑問が残る

ライター後記

どんなに「労働関係法令」が厳しくなろうと、ただ耐えるしかないという現状の人がたくさんいることを、耐えなければ未来がないと考えている人が多いことを、心の底から分かって欲しいなと思います。

 

nokotta

生きていくって大変だな、とつくづく思いますが、頑張りましょう。

読書が趣味。休日は喫茶店をはしごしながら本を読みまくります。

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