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「やりがいの搾取」や「好きの搾取」は良いこと?悪いこと?

仕事に対してあなたは「やりがい」を求めますか?夢中になれる仕事ということです。それとも「やりがい」はなくとも、つまり好きな仕事じゃなくとも、高い給料ならばそちらがいいと考えますか?加えて問うのならば、やりがいは報酬に値すると思いますか?今回は「やりがい」や「好き」の搾取について考えてみましょう。

「やりがいの搾取」や「好きの搾取」は良いこと?悪いこと?

1.「やりがいの搾取」「好きの搾取」とは?

ガイアの夜明け&逃げ恥&松浦氏の発言が話題になった2016年

ガイアの夜明けのやりがいの搾取

 

2016年、春、テレビ東京系の経済番組『ガイアの夜明け』の公式ツイッター上において、とある発言が注目されたのをご存知でしょうか。

〝良い給与に、安定した生活…。そんなものは「後回し」という人が、増えてきているんだそうです。「社会の役に立ちたい」という思いで仕事を探す人たち。働くことを通じて、一体なにを掴もうとしているのでしょうか。今夜のガイアは、人生「やりがい」探しの旅。〟

出典:ガイアの夜明け公式twitter

 

というような内容の番組宣伝も兼ねたツイートに対し、 「何がやりがいだよ! まずは安定した生活だろ!」 「やりがい探しが後回しだろ!」 という反発リプライが集中する事態が起きました。

 

そして同年秋、このツイートの影響があったために組み込んだのかは定かではありませんが、TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)』において、「やりがいの搾取(さくしゅ)」というセリフも話題に。

 

「やりがいの搾取は見過ごしてはいけない!」と。

 

やりがいの搾取――

 

これは2007年前後に教育学者である本田由紀さんが名付けた造語であり概念です。 金銭による報酬の代わりに、「やりがい」を労働者に強く意識させられることで、「正当な賃金を払わない」ということ。 分かりやすく言えば、雇用主が労働者に対し、「友達でしょ」「勉強になるでしょ」「いいじゃんこのぐらいやってくれても」「これは最終的には未来の君のためだから」という発言のもと、奉仕の心を膨らませ、あるいは善意や責任感を刺激し、タダで酷使(労働・残業)させることです。 修行中の職人、あるいは労働者の実直な性格を利用して、ボランティアで働かせるようなこのような事態、これをドラマ内において「こんなことは許さない!」と発言したのです。

 

視聴率が高いドラマ内のセリフだったので、やはりネット上で、「その通りだ! 無償の長時間労働が奨励されるのはおかしい!」「やりがいや好きは報酬に値しない!」と同調する声が多数見られる結果となりました。

 

そして同年の12月の出来事です。

 

社員に対して違法な長時間労働をさせたとして是正勧告を受けていた「エイベックス・グループ・ホールディングス」の社長、松浦勝人氏が、自身のブログ、『仕事が遊びで遊びが仕事』内において、この事態に対してコメントを発表しました。 要約すれば、

 

「今の働き方を無視する様な取り締まりを行っていると言わざるを得ない。法律が現状と全く合っていない」という訴えです。

 

「時間も忘れて夢中になる仕事から感動が生まれるんだ」とも。

 

やはりこれに対しても、ネットは大きく荒れた(多数の意見が寄せられた)のです。 「逆に時代遅れの発想はどっちだ?」と。 「出た、やりがいの搾取!」と。

 

このように2016年は「やりがい」というキーワードが世間を騒がせていたのです。 問題視されたというより、不当な指示・過剰な労働時間という以前からあった不信に対し、改めて着目した年なったというのが正しい見解でしょう。 何年も前から騒がれ、何年も改善されていない問題――。 さらにはようやくあらわになった電通の痛ましい事件――。

 

果たしてこの解決策はあるのでしょうか?

 

2.嫌なら辞めればいい、と言われる今の社会事情

好きや楽しい「やりがい」を仕事に出来るのはほんの一部

嫌なら会社を辞めろという社会の実情

 

遠い昔、労働者は「金の卵」と言われていました。 当時は高度成長期、人手が足りず、あらゆる労働者は雇用主にとって「金の卵」のようだと。

 

ですが今は、「文句があるのなら辞めればいい」といった雇用主が圧倒的に強い時代。 雇用主の意見が絶対であり、労働者は金の卵ではなく、石ころや蟻のように扱われる時代なのです。 多数の労働者は、「辞めても次がない」と思い、妥協というより我慢をして、自分を殺してまで過ごしていることが多いのです。 企業側が少ない賃金、あるいは無償で最大限の労働効率を引き出そうとしていることを仮に自覚していたとしても、意見を言うことも、もちろん職場を離れることもできないのが現状。 つまり法制度がどんなに改善、厳しくなろうとも意味のないのが現実なのです。 罪を裁いてくれても、安定した未来を保証してくれるわけではないのですから。

 

現に、「やりがいの搾取」というセリフを取り上げた『逃げ恥』においても、沼田頼綱を演じる古田新太さんが、「仕事の半分は仕方ないでできている。もう半分は帰りたいだ」という発言をしていました。 つまり、「やりがいの搾取」「好きの搾取」はしょうがない、と取れることをドラマ内で言っているのです。 「今の現実はこうですよ」と諦めや皮肉にも取れることを。

 

この、おかしいと思いながらも歯を食い縛って前に進まないといけない現状を、みなさんはどう思いますか?

 

3.解決策・打開策を見つけるには

疲れている今だからこそ立ち止まって考えてみよう!

搾取されない人生を歩むためには

 

このような「やりがいの搾取」や「好きの搾取」に対し、解決策・打開策を見つけるにはどうしたらいいでしょう。 しかし、そのことを考える前にまずは意識の改革が必要だとは思いませんか?

 

「これが正しいんだ」と決めつけている部分

 

この意識改革です。

 

つまり、「仕事はやりがいだ!」や「いや、仕事は報酬(生活の安定)だ!」という考えや、「やりがいの搾取はしょうがない」や「いやしょうがないですまされない」という意見に対し、「この自分の考えは絶対だ」と思っているその状況の見直しをしなければいけないのでは?ということ。

 

『ガイアの夜明け』のツイートのように、「仕事はやりがい!」と言い切ることは安直です。 ですが、そのリプライのように、「仕事は報酬(生活の安定)だ!」を決めつけるのもどうかと思います。 「やりがいのある仕事がしたい」「生活よりも人生を充実させたい」と考える人も中にはいるでしょうから。

 

ようするに、「こうに決まっている」と自身の考えを過信していることは、とても危険なのではないか?ということが言いたいのです。 なぜならそれによって固定した観念になり、聞く耳を持たない状態になるからです。 双方、聞く耳を持たないということは、つまり改善も進歩もしないということになります。

 

解決策・打開策の前に、どちらの意見が正しいかと論ずるのではなく、まずは客観的な視野が必要だと考えます。 「自分の意見は本当に正しいのだろうか?」という疑う心です。 そうすることで雇用主は労働者の立場になって考えるはずですし、逆に労働者は雇用主の立場になって考えることでしょう。 すると解決策・打開策、加えて言えば、「やりがいの搾取」は良いのか悪いのか、その答えに近づくはずです。

 

双方の立場に立ち、かつ多方面から見てそこでやっと見えてくるものがあるはずです。

 

4.やりがいの押し付けはブラック企業なのか?

なぜ仕事にやりがいを見出せない事が悪とされるのか?

やりがいを押し付ける企業は悪いの?

 

客観的視野、ということでまずは、雇用主が必要以上に押してくる「仕事のやりがい」。 純粋に考えたとして、仕事に「やりがい」を持つとどんなメリットがあるのでしょう。

★仕事が楽しくなる

★自分を向上できる

★生きている意味を見いだせる

★同じことをしていても「やりがい」があると身体への負担は軽くなる

 

ということが挙げられます。 どんなことをするにおいても「多少のやりがいはやはり必要だ」と考える労働者は少なくはないはずです。 自分にそぐわないことを嫌々とやることは辛いことですし、活き活きと生きるためには〝やりがい〟は必要不可欠でしょう。

 

そして次に雇用主の立場から考えてみましょう。 まずは全うとも言える部分、「言われたことしかやらない」「やりがいが皆無の人に給料は払いたくない」と考える人が多いと思いませんか? おそらくこれが、「やりがいを持て」と主張する理由の1つと言えます。 やりがいの搾取のような奉仕的労働をさせるという問題以前に、「とにかくまずはやりがいを持って仕事に取り組んでくれ」という切なる思いからなのです。

 

仮にあなたが雇用主だったとして、 「時間を切り売りして給料を貰っている感覚なんだよねえ。あくまでも時間っつーか。結果なんてどうでもいいっしょ」と言い切る従業員がいたら、おそらくいい気分はしないはず。 1時間の労働時間を潰すようにだらだらとした感じで働く人がいれば…。

 

さらに言えば、松浦勝人氏の『仕事が遊びで遊びが仕事』のブログタイトルではないですが、「俺にとって仕事は遊びだからさ」「仕事って感覚、ゼロだから」なんて言う労働者には、決して好意は持たないはずです。 「おいおい、会社の未来をもう少し考えてくれよ」とそう思うことでしょう。 「ある程度の労働効率、労働意欲を見せてくれよ」とも。

 

5.「やりがいの搾取」はいけないことか?

企業の成長にやりがいを持つ社員の育成は不可欠という事実

やりがいが企業を成長させる

 

そしてまた労働者の立場に戻ります。 『仕事が遊びで遊びが仕事』、おそらくこれは松浦勝人氏の「できれば楽しく仕事をしてほしい」「遊ぶように夢中になって仕事をしてほしい」というメッセージでしょうが、さらにこのブログタイトルを客観的な冷静な視野で見れば、「遊びなんだから給与はいらないでしょ」「遊びなんだから疲れないし、ずっとできるでしょ」とそう聞こえなくもないです。

 

『仕事が遊びで遊びが仕事』

 

これは仕事をボランティアに変えることができる、そんな黒魔法的な言葉です。

 

そして正当性を裏付けるロジックを準備している言葉でもあります。

 

 

国内最大級のグループまでの成長を支えてきたのは〝やりがい〟や〝好き〟という熱量を持った人たちが居たから。 是正勧告を受けたとしても多かれ少なかれ残業代は常に発生していたと思いますが、根本的な問題は残りますよね。 いくら残業代が出るからと言って、「どこまでも働け」「働くことで幸せを感じろ」「残業はしょうがないと思え」的な強制的な発言は腑に落ちません。

 

あくまでも「やりがい」の有無や、感じる場所は労働者が決めることです。

 

社内事情が絡む、やらざる得ないケースを、「やりがい」という言葉に置き換えるのはおかしいです。

 

ですが――ここでも客観的視野を持ち、さらに掘り下げて考える必要があります。 雇用主の寛容な人柄に惚れ、自ら多く働く人もいる、あるいは修行中なのだからしょうがないと割り切っている人もいる、という例外があることを決して忘れてはいけません。 そういう人望の厚い雇用主もいるということ、石の上にも3年的な感覚がある人もいるということを。 現に〝やりがい〟が報酬に値している人もいるということを。

 

6.富士そばの社長が出した1つの答え

対価をきっちり支払うモデルなら自主性が生まれる!?

やりがいの労働力には対価を

 

1966年創業の立ち食いそばチェーン「富士そば」社長の丹道夫(たんみちお)氏は、アルバイトにもボーナスと退職金を渡しているそうです。 「人間は平等でなくてはならない」というホワイトな信念のもとで。 そしてこう続けています。 「それは自分のためでもある。僕が何も言わなくても、何とかして売り上げを上げたいとみんなが考えてくれるから」と。

 

つまり、「仕事のやりがいはお金から生まれる」ということ、そして「やりがいがお金を生む」と言っていることになります。

 

これは労使関係においての1つの答え、すなわち正解なのではないか、と私はそう考えます。

 

 

こういったホワイトな企業を増やして行こう、未来を明るいものに変えて行こう、とみんなが本気で考えたら、もしかしたらずっと開かなかった重たい扉が開くかもしれません。 法律でさえも開くことができなかった、重たい頑丈な扉を。

 

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「やりがいの搾取」や「好きの搾取」は良いこと?悪いこと?のまとめ

  • 1.「やりがい」も「報酬」もどちらも必要!
  • 2.やりがいの有無、感じる場所は労働者が判断するもの!
  • 3.凝り固まった意見からは何も生まれない!
  • 4.未来はみんなの手の中にある!

ライター後記

記事は中立の立場で書きましたが、わざと役職につけて残業代を払わないようなブラックを超える企業はたくさんあります。 これを改善する方法は、ドラマ『踊る大捜査線』の名セリフ、「正しいことをしたかったら偉くなれ」に尽きると思います。 みなさん、今の澄んだ心のまま、偉くなって社会を、日本を変えてください。

 

nokotta

歳をとれば性格が顔に出ます。嫌な顔にならない、そんな生き方をしましょう。

読書が趣味。休日は喫茶店をはしごしながら本を読みまくります。

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